第8課

【8】民族紛争みんぞくふんそう

「民族とは、人間を、文化的要素で分類したものである。その根拠となる文化的要素の例として、言語、宗教、風習などの習慣がある。これに対して人種とは、人間を身体的特徴で分類したものである。アジア系のモンゴロイド、ヨーロッパ系のコーカソイド、アフリカ系のネグロイドのほか、オーストラリアの先住民のアボリジニーや、太平洋の島々のポリネシア人などがいる。

民族紛争(Ethnic war、ethnic conflict)とは、民族が異なるとする人々の間で起こる紛争のことである。複数の民族間の武力抗争、少数民族の政治化した紛争、複数国家に分離させられた民族間の対立などがある。民族紛争の発生要因として、民族間における宗教や政治、歴史、経済的な対立などの多様な背景があり、本来は同じ民族であるが、対立する組織を味方の組織と区別するために、民族という区別を持って紛争を遂行することもある。

【世界の主な民族紛争】
・北アイルランド紛争: アイルランド人とイギリス人の対立
・アフガン紛争(アフガニスタン戦争): イギリスの3回に渡るアフガニスタンへの侵攻
@ソビエト連邦がアフガニスタンに侵攻して始まったソビエト・アフガン戦争
Aアフガニスタン内戦(パシュトゥン人、タジク人、ハザラ人、ウズベク人の対立と
   イスラム系シーア派・スンニ派の対立)
Bアメリカ同時多発テロ(2001)事件後「対テロ戦争」の名目で始まったアメリカ合衆国の
   アフガニスタン侵攻に至る紛争
・アルジェリア紛争: 政府系イスラム教徒と反政府系イスラム教徒の対立
・カナダケベック州独立問題: イギリス系住民とフランス系住民の対立
・キプロス紛争: ギリシャ人とトルコ人の対立
・クルド人問題: トルコ、イラク、イラン、における少数派クルド人と各国の多数派住民の対立
・スーダン内戦: スーダンの北部と南部の対立、ダルフール地方におけるアラブ系民族と
      非アラブ系民族の対立
・スリランカ問題: 少数派タミル人の組織タミル
・イーラム介抱のトラ(LTTE)と多数派新原人の多い政府の対立
・ソマリア内戦: 氏族と呼ばれる権力者間の対立
・チェチェン紛争: ロシアとロシアからの独立を望むチェチェンとの紛争
・バスク問題: スペイン北西部のバスク人(ETA)とスペイン本土の対立
・旧ユーゴスラビア紛争: 連邦からの独立に伴う紛争と連邦開放後の多数派住民と
      少数派住民の対立
・ルワンダ内戦: フツ族とツチ族の対立
・パレスチナ問題: パレスチナの地をめぐるパレスチナ定住者(パレスチナ人)と
      イスラエル(シオニスト・ユダヤ人入植者ら)との関係から生じた紛争を一つの
      政治問題として扱った呼称
・コソボ紛争: 旧ユーゴスラビア・セルビア共和国コソボ自治州で起こった内戦・紛争
      旧ユーゴスラビア連邦のセルビアに属する自治州の一つであったが、2008年2月に
      独立を宣言しコソボ共和国を名乗っている。しかし、2008年8月の時点で独立を
      承認しているのは、国連加盟192カ国のうち45カ国にすぎない。独立を承認して
      いない国は、セルビア領土の一部と見なされている。
・南オセチア紛争: ロシアへの編入を求めるグルジア・南オセチア自治州をめぐる争い。

[問1] 次の文章で誤っているものはどれか次の(1)〜(4)のうちから、一つえらびなさい。
(1)1991年、ソ連邦解体により独立したグルジアの警察隊と初代大統領の
  ズヴィアド・ガムサフルディアの親衛隊が、現在のグルジア・南オセチア自治州の
  州都であるツヒンワリでオセチア人を弾圧したが、オセチア人はこれを追い出す事
  に成功した。
(2)2008年、グルジア軍が南オセチアに侵攻し、南オセチア民兵や平和 維持軍
  として駐留していたロシア軍を攻撃。ロシア側も兵力を増強して反撃を開始し、
  両国は交戦状態に突入した。
(3)1992年、南オセチア共和国独立に関しての住民投票をした際、 ロシア・
  北オセチア自治共和国のように、再びロシア傘下に入ることを恐れた住民たちは、
  グルジアからの独立に反対した。
(4)2008年の紛争後、グルジア政府を事実上支援しているアメリカや欧米諸国
  などNATO加盟国とロシアが鋭く対立しており、新冷戦の代理戦争と評している側面
  もある。

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