第13課

【13】市場経済しじょうけいざい

資本主義(しほんしゅぎ)経済の市場は商品と貨幣から成り立っている。市場への参加者が多数であり、かつ市場への参加も自由であるという自由競争下(か)で商品の価格は需要(じゅよう)と供給(きょうきゅう)の関係により決まる。

商品の販売者(はんばいしゃ)は商品を市場に出すとき必ず価格をつける。これを供給(きょうきゅう)価格(販売(はんばい)価格)という。この供給(きょうきゅう)価格は、同一品質(ひんしつ)の商品であっても販売者によって違うことがある1

貨幣の所有者である購買者(消費者)が市場全体を見渡すことができれば高い方は売れ残ることになる。そこで、供給価格を下げることになる。この様にして市場では一商品について一つの価格が成立する。市場で供給と需要によって成立する「一商品について一つの価格」を市場価格という。

ある商品の価格が上昇していけば、多くの消費者は購入(こうにゅう)を控(ひか)える。つまり、価格が上がれば需要(じゅよう)は減少し、逆に価格が下がれば需要(じゅよう)は増大する。したがって需要曲線は下図のDD'のように一般的に右下がりになる。有る商品の価格の上昇は、それを販売する企業に利潤(りじゅん)の増大をもたらす。企業(きぎょう)は儲(もう)かれば供給を増大させる。したがって、供給曲線は、下図のSS'のように、一般的には右上がりになる。価格が上がれば需要は減少する。価格が上がれば供給が増加する。

このように、需要と供給によって変わる商品価格を市場価格という。そして、価格が変わって、需要量と供給量がつりあう水準に、価格と数量が決まっていくことを、価格の自動調節機能(価格メカニズム)という。このメカニズムを、経済学者のアダム・スミスは「見えざる手」と呼んだ。

少数の企業によって供給が行われるようになると、需要側が多数の需要者に分散している場合にはその価格を受入れざるを得なくなる。供給の大きな部分を占める企業が、まず価格を決める。この企業をプライスリーダー(価格先導(せんどう)者)という。

価格が比較的高めに設定されたため、需要が減少したとすると、自由競争化(きょうそうか)ならばまず価格が下落して次に供給が減少して需要が一致する。しかし、供給側が少ない状況では需要が減少して価格の維持(いじ)が困難になると利潤(りじゅん)確保の為に供給を減らしていく。そのためこのような状況では市場価格は下方(かほう)に変動しにくくなる。これを価格の下方硬直性(かほうこうちょくせい)という。価格が下方硬直化すると、消費者は高い価格で商品を買わされる。このような状況で消費者保護をするための法律が独占禁止法(どくせんきんしほう)2である。

資本主義経済では、企業は見込みで商品を生産しており、市場による価格の自動調節機能で社会全体の生産量が調整される。
そのため、商品がよく売れて経済活動が活発になる好景気と逆に売れないため経済活動が落ち込む不景気の時期が、交互に繰り返されることになる。これを景気循環と呼ぶ。不況期には、商品が売れず価格が下がるため、企業は労働者を減らし、生産量を減らす。このため、失業者が増える。逆に好況期には、企業は労働者を雇い、生産量を増やす。このため、失業者は減り、労働者の賃金は上がり、消費も盛んになる。


[問1] 下記の説明文で正しいものはどれですか。

(1)供給が過剰になると価格は上がる
(2)需要が過剰になると価格は上がる
(3)独占禁止法は需要を規制する法律
(4)独占禁止法は価格を決定する法律

[問2] 下の図は、景気の変動を大まかに示したものである。企業が設備投資を増やし、そのため生産が活発に行われて失業者も少なく、消費が拡大していく時期を、図の中の@からCのうちから一つ選びなさい。

@
A
B
C

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