現代の国家では,議院内閣制や大統領制を採用しているところが多い。この二つの制度では,「三権分立」についての運用の仕方が違う。ここでいう「三権」というのは, モンテスキュー1以来の「立法権」(=議会/議院/国会が担当),「行政権」(=内閣/大統領府が担当),「司法権」(裁判所が担当)の,三つの権力のことである。
「議院内閣制」の場合,「行政権と立法権が不完全に独立している。」と言われる。内閣は議会の信任にもとづいて構成される。また,内閣のほうは議会に対して連帯的な責任を負うという制度である。先進国の中では,イギリスや日本などが,この制度を採用している。日本の場合,首相(総理大臣)は,国家の指導者であると同時に,それまでどおりに一議員でもある。
一方,「大統領制」は,行政権と立法権が完全に独立した形態といわれている。アメリカ合衆国が代表的な国である。しかし,大統領制にもさまざまな種類や形態がある。「アメリカ型」の大統領制や「フランス型」の大統領制などだ。
特にアメリカの場合,行政の首長としての大統領が絶大な権限を持つ。国民に直接的に(実際は間接的に)選ばれた大統領が,議会や裁判所と一定の距離を置いていて,身分的にも独立しているのが特徴である。また,アメリカ大統領は議会に議席を持っていない。議会の解散権は持たないが,法案の拒否権を持っている。
「フランス型」の場合,大統領が国家元首であり,首相を任命する権限を持っている。平常時には首相と内閣に議会への対応や内政を任せ,大統領自身は外交的な方面に努めるといったような役割分担が行われる場合が多い。もちろん,首相のほうが外交的な活動を多く受け持つ国もある。フランス型の国は,そのほかにドイツやロシアなどがある。
さて,(A)日本の議院内閣制についてである。立法府である国会は,行政府(=内閣)に対して,総理大臣の指名や内閣不信任案の議決などの権限を持つ。反対に,内閣は,国会召集の決定をしたり,衆議院の解散を決めたりする権限を持っている。内閣不信任決議案が可決した場合,内閣が総辞職すると同時に,対抗措置的に衆議院を解散する例が多い。なお,衆議院が解散した場合,解散の日から40日以内に選挙を行い,総選挙の日から30日以内に特別国会を招集することになっている。内閣の役割は,主に行政権を担当することである。つまり,国会が決めた法律・予算に従い,それを執行することである。そのほかの内閣の権限・役目には,条約の締結などの外交上の処理,予算案作成と国会への提出,政令の制定,最高裁長官や裁判官の任命,天皇の国事行為への助言と承認などがある。また,首相(=内閣総理大臣)の権限・役目には,国務大臣を任命したり辞めさせたりすること,議案の国会提出,一般国務・外交の国会報告,行政各部門の指揮・監督などがある。
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