第6課

【6】南北問題なんぼくもんだい

「南北問題」とは,地球の北側の国々と南側の国々との間の,様々な格差に関する問題のことである。経済的な格差の面から見ると,ヨーロッパ・アメリカ合衆国・カナダ・日本などの先進国1は北の方に位置し,アジア(主に西・東南アジア)やアフリカ,ラテンアメリカなどの発展途上国2は南に位置している。この「南北問題」という言葉が生まれる以前の1950年代から,先進国と発展途上国の間の経済格差は,すでに新たな国際問題として認識されるようになっていた。

発展途上国の貧困の原因はいくつか考えられる。(1)「人口爆発」 (2)貧困国内部での民族紛争や内戦3(3)資源の偏在(4)工業化の遅れや経済力・生産力の低さ,などが挙げられる。ここではまず,(4)に関連して,「経済格差」の原因について考えてみよう。

発展途上国の多くが独立前は欧米列強の植民地であり,植民地時代に形成されたモノカルチャー(=単一栽培)4経済がその後も国の発展を妨げている場合がある。多くの発展途上国が,第一次産業(=農林水産業)に依存する自国の体質を改め,産業構造や貿易構造の改革をし,経済的な独立や離陸をすることを目標としている。東アジアや東南アジアなどにおいて急速な工業化と工業製品の輸出により高度経済成長に成功したNIES(=新興工業経済地域)5などの例もある。しかし,アフリカを中心として,いまだに多くの発展途上国が存在している。

(1)の「人口爆発」も,南北問題のなかで重要な問題のうちの一つである。先進国においては,少産少死6で人口が安定しているのに対し,発展途上国では多産少死7で人口爆発の状態にある。気候的にも恵まれない発展途上国の場合,慢性的な食糧不足や飢餓に悩まされ続けている国が多い。一方,先進国にとっても,近い将来,自分たちにも関係してくる問題である。このまま発展途上国の人口が増えつづけると,世界規模での食料不足・食糧危機の可能性があるからである。

1989年の段階で,先進20か国と発展途上国のGNP(国民総生産)の格差は,約24倍ともいわれていた。その後は,途上国の間でさえも,順調に経済成長している国とそうではない国との間で経済格差が拡大しつづけている。2008年現在では世界人口は既に66億人を超えているが,90年代後半の段階ではおよそ55億人程度であった。その55億人のうちの78%を占める途上国のGNPは世界全体のわずか16%程度で,その中に13億人の貧困層が含まれる。これらのような巨大な格差をなくし,南北問題を解決するために,1964年、第1回国連貿易開発会議(UNCTAD)が開催され、発展途上国の要求を先進国に提出する場となった。「援助より貿易を」のスローガンの下、発展途上国の軽工業品などの関税を優遇する一般特恵関税や、 開発のための融資などが要求された。その後、石油産出国や新興工業国(NIESやBRICs8など)は、所得が向上していった一方、最貧国は、停滞あるいは衰退したことから、中進国との格差が増大する南南問題9が起こった。

[問1] 南北問題の解決を目的に作られた国際機関を,次の(1)〜(4)のうちから,一つえらびなさい。

(1)国連貿易開発会議(UNCTAD)
(2)国際労働機関(ILO)
(3)ヨーロッパ連合(EU)
(4)石油輸出国機構(OPEC)
[問2] 南北問題について、正しくないものを、次の(1)〜(4)のうちから、一つえらびなさい。

(1)貧困層が増大している。
(2)人口爆発による食糧危機が生じる。
(3)先進国への援助を拡大するためにUNCTADが設立された。
(4)発展途上国間における経済格差が発生している。

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